気候変動への対応

TCFD提言への賛同表明

2022年6月29日

当社は、2022年6月、金融安定理事会(FSB)により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD※)」提言への賛同を表明いたしました。

当社グループでは、気候変動問題を重要な経営課題の一つとして捉えており、その重要課題に対して、リスクと機会を踏まえて、具体的な取り組みとKPIを定めました。これらの取り組みを着実に実行することで、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を図ってまいります。 今般のTCFD提言への賛同表明により、提言に基づく自主的かつ積極的な情報開示を、進めてまいります。

※TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)
G20の要請を受け、金融安定理事会により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するため設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」を指します。気候変動への企業の取り組みについて、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4項目について、自社への財務的影響のある気候関連情報を開示するよう推奨しています。

TCFD提言に基づく情報開示

2024年8月1日

当社グループは、気候変動に真摯に向き合い、事業に影響するリスク・機会への理解を深め、その取り組みの積極的な開示に努めてまいります。

TCFD提言では、気候変動に関する「ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標」の各項目に関する情報開示が推奨されています。この4つの開示推奨項目に沿った情報の開示とともに、シナリオ分析、気候変動に伴うリスクと機会を評価しました。

(1)ガバナンス

双葉グループでは、サステナビリティ経営の推進体制において、代表取締役 社長執行役員を委員長とした「SDGs推進委員会」を設けています。

「SDGs推進委員会」が主催するマネージメントレビュー会議(SDGs会議)を、原則として年2回開催し、気候変動を始めとするサステナビリティに関する事項の審議・報告を行い、重要事項については、必要に応じて「取締役会」にて報告し、監督される体制となっています。

(2)戦略

双葉グループは、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のRCP2.6(1.5℃シナリオ)、RCP8.5 (4℃シナリオ)を参照し、国際的な議論の動向や当社事業への影響度を考慮して重要なリスクと機会の抽出と財務影響度を評価しています。

気候変動に伴うリスクと機会を認識し、「脱炭素社会の実現」を目指してCO2排出量の削減のほか、お客様にとってCO2排出量削減につながる製品・サービスの提供等を行なっています。

選定した評価項目

リスク/機会 内容
政策・法規制リスク 温室効果ガス排出やエネルギー使用に関する法規制強化(炭素税等)に伴い、対応コストが増加するリスク、および違反した場合の企業価値低下のリスク
技術リスク 脱炭素社会に向けた熾烈な技術開発競争で劣勢になった場合、投資未回収や市場シェア低下が生じるリスク
市場リスク 製品やサービスに対する省エネ性能のニーズを満たさなかった場合、ビジネス機会を逸失するリスク
急性リスク 台風、洪水のような異常気象の深刻化・増加等の物理的変化に関するリスク
慢性リスク 降雨や気象パターンの変化、平均気温の上昇、海面上昇等の物理的変化に関するリスク
資源の効率性の機会 交通・輸送手段の効率化、製造・流通プロセスの効率化、リサイクルの活用、資源の使用量・消費量の削減等により収益が向上する機会
エネルギー源の機会 低炭素エネルギー源の利用、政策的インセンティブの利用、新規技術の利用、カーボン市場への参画等により収益が向上する機会

シナリオ分析

双葉グループは、IPCC報告書のRCP2.6(1.5℃シナリオ)、RCP8.5(4℃シナリオ)を参照し、気候関連リスクの重要性評価に基づき、気候変動の事業に対する影響についてシナリオ分析を行いました。

前提となる社会経済シナリオから関係事業への影響シナリオを策定し、影響度を把握しました。その際、国際的な議論の動向、展開地域、他社事例なども考慮し、発生の可能性、事業へのインパクトを踏まえ、特に重要なリスク・機会を抽出しました。

想定したシナリオ

4℃シナリオ

気候変動に対する法規制は先進国では厳しくなっていますが、発展途上国では規制が弱く、結果としてCO2排出量は十分なほどには削減できていません。このため気温上昇が止まらず、温度上昇や1日の温度差縮小に耐えられない動植物が出現し、生物多様性の危機が顕在化しています。また、集中豪雨などの自然災害は現在以上に広域で多発しています。当社、長生工場内で保護活動を行なっている絶滅危惧種の湿生植物も環境の変化に耐えられず、絶滅の危機にさらされています。エネルギー費への炭素税の影響は事業に大きな影響を与えるまでには至りません。温暖化により感染症のリスク人口が増え、今まで影響の無かった地域にも感染が拡大し、熱中症による救急搬送も顕著に増えており、健康への影響を多くの人が懸念する状況となっています。

1.5℃シナリオ

炭素税に加えて国境炭素調整措置も導入され、世界中で気候変動対応の厳しい法規制が施行されています。これにより、気温上昇が抑えられ、自然災害も現在より大きく増えることは無く、動植物への影響も限定的となっています。当社、長生工場内で保護活動を行なっている絶滅危惧種の湿生植物も、現在と同様に季節に合わせて可憐な花を咲かせています。一方で炭素税などの規制により、エネルギー費用が高騰し、その他の調達品にも影響が出ています。温暖化による顕著な健康への影響はありませんが、真夏日や風水害などで気候変動の影響を日々感じる状況となっています。

評価結果

影響シナリオ、財務インパクト、対応策等をシナリオ分析表に示します。

(3)リスク管理

リスク管理体制として、コンプライアンス・リスク管理委員会(以下CR委員会)を設置し、グループ全体のリスクの管理の識別・評価・管理を実施しています。
CR委員会は、リスクアセスメントを定期的に実施しています。リスクの脅威に関する影響度および発生可能性の両側面で一元的なマトリクス分析を実施の上、優先順位の高いリスクを全社レベルで抽出し、対策と結果を取締役会に報告しています。

SDGs推進委員会は、抽出された課題をリスクとして捉え、CR委員会と連携し、取締役会に報告しています。

(4)指標と目標

双葉グループは、2050年度までにエネルギー使用に伴うCO2排出量(Scope1、Scope2)を実質ゼロにすることを目指して、2030年度に向けたCO2排出量の削減目標を策定し、指標をモニタリングし、施策の進捗管理および有効性評価を実施しています。

また、今後は削減対象をサプライチェーン全体に拡大(Scope3を追加)することを計画しており、現在、仕組み構築を推進しています。2026年度以降に目標値を設定の上、削減活動を開始する予定です。

Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼・工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

CO2排出量の削減目標と推移

2030年度目標:双葉グループとして2013年度比75%削減

2023年度末時点におけるグループ全体の削減率は、2013年度実績に対し54.5%となりました。2022年度に対し削減率は22.5ポイント上昇し、目標としていた『2013年度実績の46%以上削減』を達成することができました。事業ポートフォリオの適正化が主な要因となりますが、タイ工場への太陽光発電導入といった再生可能エネルギーの活用を一部で開始しています。この結果より、今後の削減計画も考慮し、目標を『2013年度実績の75%以上削減』に更新いたしました。2024年度以降も削減活動を継続してまいります。

サプライチェーンGHG排出量

2023年度の当社単体および国内関係会社におけるサプライチェーンGHG排出量は、総量で93,481.4t-CO2でした。カテゴリ別では、カテゴリ1(購入した製品・サービス)が最も多く、全体の約7割を占めています。今後は、2025年度までに当社グループ全体の排出量の把握を完了し、優先付けを行なった上で、削減活動に取り組んで行く予定です。

※GHG…Greenhouse Gasの略語で、温室効果ガスのこと。

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