生物多様性の取り組み
当社長生工場の過去
かつて当社長生工場の一帯には低湿地が広がり、そこには豊富な食虫植物や湿性植物を含む群落が存在し、日本でも有数の植物の宝庫といわれていました。その後、湿地帯は工業団地の区域となりましたが、当社としては、従来から湿性植物が自生している10千㎡の湿地帯を現状維持することとし、また、湿地の乾燥化を防止するために敷地内に17千㎡の調整池を作りました。
千葉県レッドリストによると、過去、長生工場の一帯に自生していた植物のうち、現在、34種類が絶滅危惧種に指定されており、地域の中でも貴重な場所となっています。
湿性植物の保全活動
長生工場の湿地帯には、14種類の絶滅危惧種が確認でき、保護活動を行っています。まだ20種ほどの絶滅危惧種の種子が休眠しているか、または発見されずに自生している可能性があります。そのため、絶滅危惧植物の保護に加えて発芽促進活動と自生植物の調査を行っています。
保護活動
希少種の保護活動として、大型植物や外来種の駆除、草刈りを毎年行っており、例年7月には、絶滅危惧種の一つである「コモウセンゴケ」の存在を確認できます。しかし、2023年は春から夏にかけての雨不足の影響で、一時的に全滅してしまいました。発芽の可能性を信じて散水を続けた結果、同年8月に発芽し、さらに開花まで確認できました。
これまで、駆除や草刈り等を通じて絶滅危惧種を保護してきましたが、年々雨不足が深刻になっており、湿地帯の植物の多様性が脅かされています。IPCC※の第4次評価報告書では「地球の気温が1℃~3℃上昇することにより生物種20%~30%が絶滅の危機に瀕する」と予測されており、この先、絶滅危惧種をどのように保護するのか大きな課題となっています。
IPCC:気候変動に関する政府間パネル
雨不足で枯れたコモウセンゴケ
散水後に発芽したコモウセンゴケ
発芽促進活動
湿性植物の多くは一年草であり、毎年発芽から種ができるまで観察を行なっています。
2022年には梅雨明け後に観察路の草刈りを実施しました。その結果、夏から秋にかけて観察路に6種の絶滅危惧種を確認しました。草刈りによって地面に光が届くようになり、発芽が促進されたと考えられます。
これまで保護区域の草刈りは冬季のみでしたが、2023年は梅雨明けにも実施し、湿性植物の生育状況の違いを観察しました。現在のところ、新たに絶滅危惧種は確認されていませんが、今後も観察を継続していきます。
観察路の生育状況の違いを観察するため梅雨明け後に草刈りを実施
自生植物の調査
湿生植物の多くは一年草であり、毎年発芽から種ができるまで観察を行なっています。
自生している植物の調査活動を行うため、梅雨後に観察路の草刈りを実施しました。その後、夏から秋にかけて観察路に6種の絶滅危惧植物を確認しました。生育環境の変化によるものと考えられるため、これまで冬季に実施していた保護区域の草刈りを梅雨明けにも実施し、2023年から湿生植物の生育状況の違いについて観察しています。
年々増加している食虫植物のシロバナイシモチソウを観察しています。
自生している場所から離れた所で確認された食虫植物のコモウセンゴケ
観察路に確認されたイトイヌヒゲとゴマクサの群落
調整池の絶滅危惧種保全活動
2016年に当社調整池で生態系調査を実施した際、絶滅危惧種であるミナミメダカの生息が確認されました。しかし、天敵となるアカミミガメやブラックバス、ソウギョなどの外来種の生息も確認されました。そのため、2019年から2年間の調査では、ミナミメダカの存在を確認できませんでしたが、2022年には43匹採取することができました。生息環境が懸念されたことから、水槽内での隔離を開始し、2023年の春には30匹の稚魚を確認することができました。しかし、その後の明らかな増殖が確認できないことから、水温や餌の量に着目して別の隔離環境を追加作成、従来の環境と比較しながら、有効性を調査しています。今後も放流に備えてミナミメダカを増やす試みは継続します。
ミナミメダカ繁殖の試み(水槽)
水槽内の産卵床