シャノンの通信容量定理と切れづらい無線

1.Claude E Shannon

昔、AT&TのBell研究所にシャノン(1916~2001)という非常に優秀な研究者が居ました。通信と符号理論について非常に先進的・革新的な研究成果と理論をうち立てました。この論文はリプリントが以下のリンク先に掲載されています。通信理論の古典、原点と言えるでしょうか。

2.シャノンの通信容量定理

表記のシャノンの通信容量定理というのは、「通信容量のシャノン・リミット」と呼ばれ、通信容量の理論限界についての理論です。このレベルへの到達は現在の技術を持ってしても未だ不可能です。シャノンの通信容量定理は以下で示されます。

C = B log2 (1 + S/N)

ここでCは通信容量、Bは帯域幅、またSは信号レベル、Nは雑音レベルですので、S/NはSN比になります。log2は2を底とする対数です。S/Nが1より大きければ帯域幅を十分に取って通信路の符号化を最適に構成(どうやるかはシャノン、現在の研究者さえも答えを出していませんが)することで、エラーの無い通信容量Cが確保できるというものです。ここで注目することは、Nはホワイトノイズであること、通信路の符号化(符号理論という意味と変調という意味の両方)が必要ということで、現実の無線のような受信レベルが刻々と変動するフェージング通信路ではこの話は直接、そのまま単純には当てはめられないということになります。

3.帯域幅との関係

別の話として、「Bを拡大すれば」という話はスペクトル拡散通信に通じるところで、スペクトル拡散通信では 広い周波数帯域に電力スペクトルを拡散しますので、通信容量定理をうまく活用しているといえます。とはいえ、現実問題として周波数資源の逼迫している現在 (社会でいろんな無線システムが利用されており、周波数がギュウギュウに使われている)では、そうやすやすとBを広げるわけにもいきません。Bを制限しつつ、最適な通信を行う必要もあります。また、フィルタで帯域制限がされている場合(一般的にはそうしている)では、Bを大きくするとNが大きくなって、結果的にS/Nが低下するという点もあります。この、Nが大きくなるのは、ホワイトノイズが周波数に関わり無く一様にノイズの電力が分布しているため、帯域が広くなればそれに比例して帯域内で検出される(無線屋は「帯域に落ち込む」といいます)ノイズが増えるということです。

4.実際の無線機では?

特定小電力の10mW送信電力の無線機などは送信出力は決まっています。一方でビットレートが高速化してくると、必要な帯域が広くなるため、帯域内の落ち込む雑音量が増えてしまいます。1ビット当たりのSN比としてEb/Noという基準を用いますが、実際問題としては、帯域に落ち込む雑音量が増大するために結果として1ビット当たりのSN比、つまりEb/Noが低下してしまうことになります。

ここで大切なことは高速化するとEb/No(S/N自体も同じく)が低下するので、ビットレートを高速にすればするほど、距離の届かない無線システムとなってしまうことが判ります。同じ送信出力だと高速なほど遠くまで届きません。無線LANやBluetoothなどと弊社無線システムを比較してみれば明らかです。

産業用途で「届かない」はできる限り避けなければならず、他の用途と比較してもより高い安定性が望まれます。さらにはホワイトノイズだけで議論もできず、実際の通信ではマルチパス、フェージング、シャドウイングによるレベル変動や位相ズレが発生しやすいため、いろいろな条件を加味して無線システムを設計する必要があります。弊社は無線回線を安定にして通信させる多種の技術を複数応用して、安定に通信が行える無線機を標榜し、研究開発ならびに製造を行っております。

5.むすび

書き出しから終わりで、理論的なシャノンリミットの話から、弊社の無線機の信頼性の話にすりかわっています。筆者も若手技術者に『そういう文は書くな、論理の筋を通せ』と指導していますが、こういう文は確信犯ではなければ(であっても?)書いてはいけません(笑)。