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ウルトラワイドバンド(UWB)通信

ウルトラワイドバンド(UWB)通信

 UWB(Ultra Wide Band)通信はここ数年でにわかに脚光を浴びてきた技術です。スペクトル拡散通信と同様にUWB通信もアメリカの軍事技術に端を発している技術です。

 UWBはレーダ技術の一つといえるかもしれません。非常に短いパルス信号を送信して、それによって通信を行うものです。純粋にパルスのみを送信して通信を行う方式(図1)と、搬送波をモールス符号のように高速にオンオフして通信を行う方式(図2)が主として研究されています。UWB通信は100Mbpsを超える通信を実現できる、近距離(~10m)の通信を行う技術として注目されているのです。主として考えられる用途はパソコンでの画像・映像データ伝送やHDDの無線化などがあるでしょう。またここでは「通信」として説明していますが、UWB自体は、壁越しの様子を画像観測する「イメージング」や距離を測定する「レンジング」の用途(つまり上記のレーダとしての応用)にも利用できます。

図1

図1

図2

図2

 法律の観点から言うと、アメリカ(FCC)は2002年2月にUWBを許可する法律を制定しました(CFR Title47, Part15.501以降)。これは図3に示すようなスペクトルレベルを満足するように電波を送出しなければなりません(図3は室内用途の例で、屋外用途はこの数値と異なります)。このレベルは帯域としては広くなっていますが、電子機器の放射雑音のレベルに近くなっています。このスペクトルレベルに合致させるため(スペクトルマスクと言います)、パルスの波形を整形したり、送出電力を制限させたりします。

 日本では現在、総務大臣からの諮問をうけて、情報通信審議会にてUWB通信の審議が行われています。他の既存通信システムとの干渉問題の整合性をとるのに苦労しているようですが、近々答申が出ると思われます。

図3

図3

 無線技術の観点からUWBを見てみようと思います。UWBのうちパルスのみの方式は単純であると考えられますが、パルス自体が最大でも数nsという超高速であるため、回路として実現することは結構大変です。パルスの波形をスペクトルマスクに合わせる必要性もあります。一方で搬送波をオンオフする方式はモノパルス方式よりは現実的ですが、これについてもあまりに低速でオンオフするとスペクトルマスクに適合しないという問題もあります。これらの兼ね合いが難しいところとも言えます。通信する場合も高速パルスを受信するために、広い周波数に亘り安定した振幅・位相特性を持つ、アンテナ、増幅器、検波回路が必要になるため、だれもが易々とUWB通信システムを実現できるともいえないと考えます。身近な例が広帯域オシロスコープで、数GHzの帯域のオシロスコープを実現することがいかに困難かで理解できると思います。逆にここが「設計の落としどころ」としてどうやって実現するかを検討することがセンスと言えるでしょう。

 UWB技術を視野に入れて、2003年ごろからIEEE(アメリカ電気電子技術者協会)にて無線PAN(Personal Area Network)の標準化の作業が開始されました。ここではIEEE 802.15.3aと呼ばれるワーキンググループが結成され、ここで複数(当初はかなり多数!)の技術提案がなされました。現在(2004年初め)では、この提案のうちから投票で良いもの(実際はダウンセレクションという形でふるい落とし選考)が選ばれ、ふるい落とされたものは生き残り提案に自らの提案を付加して合流し、最終案まで進めようとしています。

 現在は残念ながらオリジナルのUWB技術では無く、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex;直交周波数分割多重。地上波デジタルTVで用いられている)方式と、UWB+DS(Direct Sequence;直接拡散。スペクトル拡散の技術)方式の2方式になっています。

 この2案がそれぞれ主流をとるべく会合がなされていますが、いまだに1案に決着がついていません。これはどちらが良い方式であると言い切れない面と、(これは筆者の私見ですが)簡単な無線PANを実現するという目的に対して、その技術的実現性の困難度や問題が多い点もあると思われます。このままいくと、2案を標準化して市場原理に任せるという方向になりそうです。

 弊社としては、UWBは今後の無線通信の一つのキーテクノロジーであると考え、一方で産業用無線という「無線が切れづらい」「高い通信信頼性」という点を考慮して、標準化動向に注視し(標準化をそのままやらないのは双葉らしいと言えるかもしれませんが)、産業用途に特化して研究開発を行っていく所存です。