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無線機の導入にあたって

1.概要

本ページは、無線機を導入する上で考慮するポイントと試験について示します。

2.無線機の導入ポイント

2.1.システム

 無線機を導入する際、最も重要なことはシステム設計で、有線と比べたときのコスト・信頼性・安全がポイントになります。
コストについては大きく2つに分けられます。

  • 導入コスト ・・・ 機器のハードコスト、設置コスト
  • ランニングコスト ・・・ メンテナンスコスト、インフラ代、電気代など

導入コストはハードウェアの価格も重要ですが、設置にかかる費用も考慮が必要です。たとえば、有線ではどうしても人手により配線をする必要があり、配線が長くなると線材コストもかかりますが、それ以上に人件費を考慮する必要があります。特に、公共の場の工事には作業員だけでなく、道路整理などの余分な人件費もかかり、併せて、安全も考慮する必要があります。
ランニングコストはメンテナンスや電気代だけでなく、公衆回線(電話など)を利用する場合の費用も重要です。たとえば、マンホールポンプの警報システムは電話回線を使用しているため、1箇所あたり年間で約3万円の電話代がかかり、ポンプが20箇所あれば、年間で60万円もの費用がかかります。
したがって、上記を考慮して無線と有線のコストを試算する必要があります。

信頼性は、そのシステムにおいてデータの確からしさがどの程度必要なのかということです。この場合、無線だからデータが消失したり化けたりするわけでなく、データが移動するまでの時間遅れが重要です。たとえば、スイッチが押されたという情報を離れた場所から監視する場合、スイッチが押されてデータが届くまでの許容時間(有線区間+無線区間の合計)を把握する必要があります。また、何らかの障害で無線が届かないことを考慮したフェールセーフなどのシステム設計が必要です。
無線機は性能と電波環境でレスポンスが変わるので、要求にあった無線機と設置条件が必要です。無線機の性能はスループットばかりに目がとらわれがちですが、それ以上に再接続性が重要です。つまり、無線機はある条件で電波が切断したとき、再度同期して接続させる時間が必要で、無線機により再接続に秒単位を要すものもあります。また、電波環境によっては1回の通信ではうまくいかないので数回から数十回の再送をすることもあります。環境は電波の送受信をできるだけ良くする必要があり、特にアンテナの選択と設置条件が重要です。

安全は、使用条件で作業に危険をともなう場所での利用される場合です。たとえば、崖の崩落センサや原子力など、人が近づくのが困難な場所または近づくのに時間のかかる場所は無線によりデータ収集するのに適します。

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2.2.性能

 性能は単にハードの性能でなく、システム的にあった性能の製品選択が必要です。これは、システム設計時に考慮するため、上記と重なることがほとんどですが、以下に項目を示します。

  • スループット ・・・ 1秒間に送信できるビット数
  • レスポンス ・・・ 返答要求がある場合、要求から返答までの時間
  • 再接続性 ・・・ 無線が切断されて再度同期が確立し、通信が回復するまでの時間
  • サイズ・重量・消費電力 ・・・ 用途に適したもの(特に組込時)
  • アンテナ ・・・ 指向性・利得・サイズ
  • アンテナケーブル ・・・ ロス・長さ・太さ・重量
  • その他

たとえば、組込機器に使用する場合、サイズや消費電力は重要ですし、インフラとして利用する場合には距離は重要です。(もちろん、他の項目も関係しますが、都度考慮して決める必要があります。)

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2.3.干渉問題

 無線機を使う上で干渉問題は避けて通れません。2.4GHz帯の無線機に限れば、IEEE802.11a/b/gの無線LANやBluetoothなどは規格化されていますが、その他は各社独自の規格のため、周波数がかち合う場所では、混信妨害と言う形の干渉が発生します。また、電波が建物などに反射して、直接波と干渉するマルチパスフェージングも干渉源です。
2.4GHz帯または5GHz帯で利用されているデータ通信の電波は共有財産ですので、一人勝ちではよくありません。通常、先に導入してあったエリアに後から入ったシステムが干渉しているから止めてくれ、などと言う既得権を主張する場合がほとんどですが、これは誤った考えです。先に導入したシステムは後から無線機が入っても問題の無いように設計されていなければいけません。また、後から入ったシステムは先にシステムがあるかを確認する必要がありますし、その後に追加されることも考慮する必要があります。
この解決策として、「不必要に電波を出さない」、「周波数を変更する」、「アンテナで空間を切り分ける」、「データをコード化し、不要なデータをスクリーニングする」など、が考えられます。この中で、周波数を変更するケースとアンテナで空間を切り分けるケースが多く用いられます。
周波数を変更するケースは、電波送信時に他で同じ周波数を使っていることがわかれば使っていない周波数に変更し、干渉を防ぎます。ただし、このためには無線機に複数の周波数チャネルが必要です。
アンテナで空間を切り分けるケースは、空間ダイバシティ受信による電波環境の選択と八木アンテナなどによる指向性アンテナを利用、およびそれらの複合となります。
ダイバシティ受信は、通常2本のアンテナを設置し、電波環境の良いアンテナで受信をする方式で、移動体ではほとんど採用されています。また、ダイバシティには先の空間ダイバシティだけでなく、周波数ダイバシティ、偏波ダイバシティなどもあります。
指向性アンテナを送信側に使用すれば電波の放出範囲が限定されますので、不要な範囲への干渉が防げます。また、受信側に利用すれば特定範囲だけの電波しか受信しませんから、不要な電波を受信しなくなります。ただし、送信側と受信側の位置関係が変わる移動体では、指向性アンテナを使うと場所によりうまく受信できないケースがあるので、用途によりアンテナを選択する必要があります。また、送信については、電波法の規定があり、通常、指向性アンテナはゲインも高いので、規格以上送信電力となる場合があります。よって、送信側に取り付ける際はメーカに相談する必要があります。

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2.4.アンテナ

一般的に使用されているアンテナと特徴は以下となります。
種類 指向性 指向角度 ゲイン(2.4GHz帯) その他
ダイポールアンテナ 無指向性 なし 低い(~7dBi程度) 取り扱い容易
八木アンテナ 指向性 素子数で変わる 素子数で変わる(~20dBi程度) 指向性の調整が必要
平面アンテナ 指向性 前側で緩い 低い(~10dBi程度) 小型で取り扱いが容易
パラボラアンテナ 指向性 鋭い 高い(~30dBi) 指向性の調整が必要

ダイバシティ受信が可能な場合は、同じ種類のアンテナだけでなく別の種類を組み合わせれば、用途が格段に広がります。たとえば、特定の2点間だけの通信ならば、送信側に平面アンテナ、受信側に八木アンテナを組み合わせれば、受信感度がアンテナゲイン分上がるので長距離通信が可能になります。
また、アンテナを設置する上で考慮しなければならないことに、アンテナケーブルがあります。同じケーブルを使用しても、使用周波数でロスが異なります。また、ケーブルが太いほどロスが減りますが、取り扱いにくくなります。折角ハイゲインのアンテナを用いてもケーブルロスが大きくてはなにもなりません。そのため、ケーブルには次の注意点が必要です。

  • 出来るだけ短くする
  • 出来るだけ太いものを選ぶ(ただし、コストと設置を考慮する)
  • 曲げる場合はできるだけ大きなRとする(Rがきついと、インピーダンスマッチングのズレでロスが増大する)

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2.5.設置

 無線を設置することは、システムを検討するのと同じくらいに注意が必要です。
まず、注意しなければならないことはアンテナです。
アンテナは基本的に互いが見える位置とする必要があります。特に、周波数が高くなると電波の直進性が増して、アンテナが見える見えないだけで通信距離に格段の違いが発生します。
次に重要なのが電波干渉です。導入時、スペクトラムアナライザーやメーカの評価ツールで電波環境を確認してから導入する必要があります。(弊社では簡易スペクトラムアナライザーソフトを用意しています)
また、屋外設置の場合は環境対策は重要です。忘れがちなのがアンテナの対策で、冬場の雪がアンテナに積もったり、鳥がとまって通信できないなどが有ります。

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3.無線機の導入時の試験

3.1.電波環境の測定

 2.4GHz帯および5GHz帯の電波には、400MHz帯にみられるような電波発射の規制はありません。したがって、電波法の規制内の条件をクリアすれば自由に電波を発射できます。そのため、自分が導入するシステムで利用する電波が既に存在しているか確認する必要があります。
確認方法は、スペクトルアナライザーなどの専門の測定器を使う方法が一般的ですが、これらの機器は非常に高価で、一部の専門メーカに限られます。
当社では、当社無線機を利用してパソコン画面で電波の状況を確認できる簡易スペクトラムアナライザーソフトをHP上で公開しております。本ソフトウェアを利用することで、高価な測定器を買うことなく電波の存在を確認できます。
電波環境測定を行い電波が確認された場合は、使用する無線機が干渉の無い周波数に電波を移動できるかを確認する必要があります。当社のFRHシリーズは94の周波数チャンネルを持っていますので、容易に別のチャネルに変更できます。

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3.2.通信試験

 通信試験を行う際に、システム全体で検証を行い要求レスポンスやスループットを判断するやり方が一般的ですが、この方法ですとどこがボトルネックになっているのか判断できず、検証作業が膨大になります。無線にかかわらず有線の場合でも特定の2点間のスループットが低下していると、そのスループットがシステム全体のスループットになってしまいます。イーサネットではルータを通して複数の経路が確保されている場合、自動的に最適のルートを探索してスループットの低下を防げますが、無線で複数の経路を確保するようなシステムを作ると、導入コストが有線に比べて膨大となり、制御するシステムソフトウェアも複雑になりすぎて現実的でありません。そのため、各ルート間の通信状況を確認し、電波のルートを決定する必要があります。
当社FRHシリーズ、FDAシリーズ、FDHシリーズには通信状況を確認するため予めTS2というテストモードを実装しています。(一部の製品には搭載されていません)このモードを使うことで、特定の2点間の電界強度・エラーレートが測定できます。
電波環境測定で他の電波による干渉がないことが確認されており、電界強度が十分高いにもかかわらず通信エラーが多発する場合は、マルチパスフェージングが発生していることが考えられます。この場合は、アンテナ設置の位置を変更することで容易に改善されることが往々にしてあります。また、2つのアンテナを利用したダイバシティ受信にすれば、感度の良いアンテナを選択するため、より高い効果が望めます。
電界強度が低い場所では通信距離が限界となっています。この場合、通信する2点の中間に無線機を入れて中継することが望ましいのですが、無線機追加によるコストアップとスループット低下のデメリットが発生します。電波法では受信専用として高利得アンテナを利用することは許されており、感度低下を補うことができます。そのため、通信相手が多数ある場合や移動体との通信の場合には、無指向性のコリニアアンテナが利用できます。通信相手が固定されている場合は、指向性の八木アンテナやパラボラアンテナが利用できます。また、最近の電波法の改正により、送信側にも高利得アンテナが利用できるようになりました。ただし、この場合は、新たに電波法の申請が必要となります。また、使用条件についても制約があります。使用に当たっては、当社営業まで御相談願います。